2021年05月31日

扉はひらく いくたびも

―時代の証言者―
竹宮惠子/知野恵子(聞き手)著

<内容>
読売新聞朝刊に27回に亘って連載した「時代の証言者 マンガで革命を」(2020年5月23日〜6月30日)を大幅に加筆、再構成して書籍化したもの。

「刊行によせて」  「戦後マンガの歴史と歩む」  「子ども時代」
「漫画家への道」  「大泉サロン」  「風と木の詩 地球へ…」
「新たな境地を求めて」  「大学、未来へ」  「あとがき」


<感想>
初めての自伝『少年の名はジルベール』と重なる部分が多々あるものの、作品を思い浮かべながら一気読みしてしまった。代表作『風と木の詩』よりもSF物が好きだな。再読したくなった。
70歳にしてパソコンとマンガ制作ソフトで本格的にマンガを描く、デジタル制作に挑戦したそうだ。新しいことに挑戦し続ける姿勢に感動した。
「大泉サロン」解消については、萩尾望都先生に対しての御自分の嫉妬や焦り、劣等感の所為と明言されている。共同生活を解消して半年後くらいに「距離を置きたい」と伝え、それ以降、萩尾望都先生とは没交渉とのこと。おふたりのファンで作品も大好きなので少し残念かな。
そして、『風と木の詩』続編の話があるみたいだが、それは似て非なる物であることは『ポーの一族』再開が証明していると思う。吉田秋生先生の名作『BANANA FISH』の結末を身悶えして嘆き恨んだけれど、今ならあれが正解だったと納得できる。でも、ま、『風と木の詩』続編が出版されたら買ってしまうかなぁ。
満足度 4.gif



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『地球へ…』  『風と木の詩』  
  

『紅にほふ』  『疾風のまつりごと』  萩尾望都『一度きりの大泉の話』
  


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posted by ももた at 09:49| 東京 ☁| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月28日

燃える川

ピーター・ヘラー 著
上野元美 訳 「THE RIVER」

<あらすじ>
8月下旬、カナダ北東部の原野。ダートマス大学へ通う冒険と読書が好きな親友同士のジャックとウィンは、川のように繋がった湖を順に巡ってカヌー旅行を楽しんでいた。
ところが、山火事を目撃する。彼等は無線機も衛星電話も持っていないから、誰にも連絡できなかった。
その翌日、酔っぱらった男2人のキャンプを見つけ、警告するも無視された。
山火事を確認してから3日目、深い朝霧の中で怒鳴り合う男女の声を耳にする。火事の注意を促すためにキャンプ地を探すが、見つけられなかった。
その翌日、妻のマイアを見失いショック状態に見える負傷した男・ピエールと遭遇する。ジャックとウィンはキャンプ用品一式を持ち、マイアを探しに湖へ戻った。そして、重傷を負い話す体力もないマイアを発見して保護する。
キャンプに戻ると、ピエールは食料と彼らの用具を捨てて行方を晦ましていた。楽しみにしていた旅行の流れが変わり、雲行きが怪しくなる。
男の襲撃と大規模な森林火災が迫り来る中、ジャックとウィンは安静を必要とするマイアを連れ、生き延びるために闘うが・・・

<感想>
大自然の景観描写が素晴らしい。タフでハンターの鋭い目を持ち、緊急事態になると指揮官モードになるジャックと、急流下りの豊富な経験があって心優しいウィン。信頼し合う青年2人の友情と絆も素敵だ。
そして、移動する動物と飛び立つ鳥たちに爆発する木、激流とカヌーの転覆、フラッシュオーバーと火炙りになる恐怖など、スリルとサスペンスに富んだ展開になっている。
ジャックとウィン、それぞれの家族のエピソードも相俟って、凄く面白い冒険ミステリだと思う。
だけど、ハッピーエンドにして欲しかったな。読了後、切なくて胸が痛くなった。
満足度 5.gif



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『いつかぼくが帰る場所』  ヘニング・マンケル『手/ヴァランダーの世界』
   


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posted by ももた at 08:51| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月26日

ソ連が満州に侵攻した夏

半藤一利 著

<内容>
第1章 攻撃命令/7月16日、米国は原爆実験に成功した。それが序曲だった。スターリンはワシレフスキーに言った。「前進し給え」と」

第2章 8月9日/深夜午前1時、ソ連軍侵攻の火蓋は切られた。大本営陸軍部参謀次長川辺虎四郎中将は自らの手帖にこう認める。「予の判断は外れたり」」

第3章 宿敵と条約と/満州は日本にとって、そしてソ連にとって、どのようなものであったか?宿敵の日ソは中立条約を結ぶが、両者の思惑には天と地の隔たりが…。」

第4章 独裁者の野望/スターリンは昭和17年に対日参戦を決意していた!戦後処理を図る列強の権謀が渦巻く中、この男の密かな野望が徐々に浮かび上ってくる。」

第5章 天皇放送まで/「五族協和」の理念は音をたてて崩れ去った。関東軍は戦う前から撃破を放棄し、上層部は妻子を連れ退避する汽車に乗り込む。こうして100万同胞の悲劇が始まった。」

第6章 降伏と停戦協定/「天皇の軍隊」は国民を守らなかった。降伏の仕方さえ知らなかった!そして、国際法を無視したソ連軍によって、50万人がシベリアへ…。」

第7章 一将功成りて/スターリンは日露戦争の復讐戦に大勝利した。その陰で、18万余の日本人が満州、シベリアの地で果てた。「正義の戦争」など、未来永劫、ありえようもない。」

「大本営陸軍部職員表/関東軍指揮系統略図/第一極東方面軍侵攻概要図/対ソ作戦計画参考図/ソ連軍侵攻概要図および関係地名図/主要参考文献/あとがき」

<感想>
文章の歯切れとテンポが良く、太平洋戦争の知識がなくてもすらすら読め、分かり易い。補注が充実しており、昭和の陸軍激動史や歴史小説を読むような面白さがある。
ロシア革命以降の日本とソ連の関係、日ソ中立条約侵犯(条約の不延長通告はあったが、まだあと1年間は有効。ソ連の対日宣戦布告は、国際法に違反する。日本はソ連に宣戦布告をしなかった。)、ポツダム宣言受諾前後の動き、米英両国で作成した領土不拡大の原則「大西洋憲章」、ヤルタ秘密協定と国際法上の大原則、北方領土問題とシベリア抑留、ソ連の残虐な行為と開拓団の悲劇等々、勉強になった。一読の価値がある本だと思う。
満足度 5.gif



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稲垣武
『昭和20年8月20日 日本人を守る最後の戦い 四万人の内蒙古引揚者を脱出させた軍旗なき兵団』


半藤一利『日本のいちばん長い日』  映画『日本のいちばん長い日』
   


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posted by ももた at 09:56| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。