2021年04月30日

ローンガール・ハードボイルド

エドガー賞YA部門受賞
コートニー・サマーズ 著
高山真由美 訳 「SADIE」
カバーイラスト Add your name

<あらすじ>
米国コロラド州の田舎町コールド・クリーク。3日前に行方不明届けが提出されていた13歳の少女マティ・サザンの遺体が、火災現場近くの林檎園で発見された。警察は少女殺害の犯人を見つけられなかった。
その後、マティの6歳違いの異父姉で吃音のあるセイディ・リラ・ハンターが失踪した。
マティの死から1年後、トレーラーパークの管理人で、姉妹の祖母代わりでもある68歳の白人女性メイ・ベス・フォスターが、ラジオの人気パーソナリティであるウェスト・マクレイに、セイディを連れ戻して欲しいと頼む。
マクレイは、コールド・クリーク近隣の町の過疎化や貧困について取材したばかりだった。ラジオ番組の特集としてセイディの失踪に取り組み、事件の真相を追う。
セイディは最愛の妹を殺害した義父への復讐を狙っていた・・・

<感想>
不幸な生い立ちの少女の孤独な闘いを描いた、面白いミステリだと思う。
マクレイによるセイディの追跡劇、つまりラジオ番組とセイディの復讐劇を交互に描き、セイディが経験した醜悪な出来事と事件の真相が明らかになって行く。そして、アメリカ社会の格差と暗部を浮き彫りにしている。予想していたこととはいえ、貧困とネグレクト、性的虐待が相俟って、胸が痛くなる。救いも無く、中途半端な終わり方だと思った。
満足度 3.gif



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ボストン・テラン『音もなく少女は』  リズ ・ムーア『果てしなき輝きの果てに』
   


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posted by ももた at 08:45| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月26日

罪の声

第7回山田風太郎賞受賞作
塩田武士 著
装画 中村弥

<あらすじ>
京都でテーラーを営む曽根俊也は、自宅兼店舗で黒革のノートと古いカセットテープを見つけた。
テープを再生すると幼い頃の自分の声が入っていて、その文言は31年前に菓子メーカー社長誘拐、複数の製菓・食品メーカーを恐喝した大事件の犯人が使った録音テープの内容と一致していた。
ノートには、青酸ソーダ入りの菓子をばら撒き日本中を震撼させたこの未解決事件が発生する4カ月前に、オランダで起きたハイネケン経営者誘拐事件の顛末と、日本企業の株とか記者クラブ、警察機構について、イギリス英語で書かれていた。
寡黙で仕立屋一筋だった亡父の関与は考えられないが、これまで会ったことのない伯父・曽根達雄はイギリスで消息を絶っていた。
曽根俊也は幼い娘を誹謗中傷の渦から守るため、父の幼馴染みで高級家具店店主・堀田信二と共に調査に乗り出す。
一方大手新聞の大阪本社では、関西を中心に起きたこの有名な未解決事件を、年末の特別企画として特集することにした。
文化部記者・阿久津英士も応援に駆り出され、取材班に組み込まれた。関係者の足跡を辿るうち、記者生活にさざ波が立ち始め、未解決事件の深みに嵌まって行く・・・

<感想>
2000年に時効を迎え完全犯罪となった「グリコ・森永事件」をモデルにしており、そそられると同時に良く調べられていると思った。
家族の問題を抱える善良な庶民と新聞記者の取材活動を交互に描き、真犯人の影に迫って行く。文章が固くなくて読み易く、ストーリー展開も巧い。
そして、新聞社の人間模様に笑えるエピソードもあり、犯人像の考察、警察の迷走、暴力団員と利権屋、株価操作と仕手戦など、時代を感じて感慨深く読み応えもある。とても面白いミステリだと思う。
しかし、大人に利用された子供が憐れで胸が痛くなる。謎が全て解明されたとは言い難い。すっきりしない結末だったな。
満足度 4.gif



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『罪の声 昭和最大の未解決事件』 一橋文哉『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』
   

映画 『罪の声』   『ハイネケン誘拐の代償』
  


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posted by ももた at 10:27| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月22日

ポーの一族 ユニコーン

萩尾望都 著

<あらすじ>
永遠の時を生きるポーの一族であるエドガーは、自らの手でアランを仲間にし、一族から離れて旅を続けていた。
しかし1976年、ロンドンで起きた古物商の火事に巻き込まれ、アランは炎の中に消え、エドガーの消息も途絶えた。
40年後、エドガーがドイツのミュンヘンに現れ、ファルカと再会する。そして、黒炭の塊をアランだと言う。
エドガーはアランを取り戻すため、大老ポーによってポーの村から追放されたダイモンに従うが・・・

<感想>
エドガーが黒炭の塊をアランだと言った時点で受け入れ難く、感情的になってアランを取り戻せるなら悪魔とだって契約するエドガーなんて信じられない。これまでの作品の持ち味が消えてしまった感がする。前作『春の夢』でも感じたことだが、これまでのシリーズとは完全に別物だと思い知った。
それに、アランを取り戻す話が進むのかと思いきや、別の話にすり替わっている。大好きな作品だけど、新シリーズはもういいや。宝物が手のひらから零れ落ちて行く気がした。
満足度 1.gif



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『一度きりの大泉の話』   竹宮惠子『扉はひらく いくたびも』
   


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posted by ももた at 22:45| 東京 ☀| Comment(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。