2021年03月31日

赤い砂

伊岡瞬 著

<あらすじ>
2000年7月半ば、国立疾病管理センター職員・阿久津久史が、JR高田馬場駅で電車に飛び込んだ。
2週間後、その凄惨な現場に臨場した警視庁戸山署鑑識係員・工藤智章巡査部長が、若い制服警官・山崎浩司の拳銃を奪い、発砲して重傷を負わせ、拳銃自殺した。
同じ日、阿久津を轢いた運転士の早山郁雄も、錯乱して包丁を振り回した挙げ句、トラックに撥ねられて即死した。
工藤と同期で親友でもある刑事課の永瀬遼巡査部長は、この自殺の連鎖に不審を抱き、コンビを組むベテラン刑事・武井邦夫に訴えるが、騒ぎ立てるなと諭された。
そんなとき、工藤に肩を撃ち抜かれた山崎が、入院先の病院で暴れて14階から飛び降りた。
2カ月後、大手製薬会社社長・西寺信毅宛てに、会社に激震を見舞わせる内容の手紙が届いたが、一度きりで終わった。
ところが3年後、創業者である祖父・西寺喜久雄の名を騙った脅迫状が届く。そこには「赤い砂を償え、遺族に2億ずつ支払うこと。」と書かれていた。西寺社長は、池袋にある探偵社の社長・斉田哲男に調査を依頼する。
1週間後、またしても脅迫状が届き、斉田が錯乱状態でビルから飛び降り自殺した。
その速報を聞いた永瀬は、週刊誌の記事を読み、3年前の自殺の連鎖と関連があると睨む。自責の念に駆られ、独自調査に乗り出すが・・・

<感想>
「赤い砂」とは、感染すると錯乱を起こして激しい自傷行為に走る危険なウイルスのこと。
証拠廃棄、隠蔽や偽装など、何やらニュース報道の裏側を見せられているようで、心がざわつく。このコロナ禍に於いて、興味深いミステリだと思う。
しかし、繰り返しが多く、ストーリー展開も遅い。真犯人の動機も説得力があるとは言い難い。中途半端な終わり方だと思った。
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『瑠璃の雫』  内藤了『DOUBT 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』
  


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ラベル:星3 伊岡瞬
posted by ももた at 08:53| 東京 🌁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月30日

介護のうしろから「がん」が来た!

篠田節子 著

<内容>
「1.発見/「ヒン」でもマンモに写らない」
「2.入院まで/「標準治療」とは、お安くできるスタンダードクラスの治療、という意味ではないらしい」
「3.再建の決断/還暦過ぎのシリコンバスト」
「4.手術/バストが邪魔」巨乳温存マダムのゴージャスな愚痴と、手術台上のガールズトーク」
「5.院内リゾート/読書三昧とオプショナルツアー」
「6.退院/自宅療養時の不安 「先生、右側が叶恭子になっています!」」
「7.手術後25日の海外旅行/天使が微笑む都−7年ぶりのバンコク」
「8.日常復帰/雑用と飲み会の日々−廃用症候群3歩手前で考えたこと」
「9.2度目の手術へ/乳房とは仰向けになると変形するもの−形成外科手術の難題」
「10.解禁/クリスマスの金の玉」
「11.乳房再建その後/見た目問題とさわり心地」
「12.波乱含みの年明け/がんのうしろから何が来る?」
「13.介護老人保健施設入所の経緯/「施設もデイサービスもショートステイも、絶対拒否!」な家族を抱えた介護者のために」
「14.ホーム巡礼 八王子14ヵ所/まずは見学、何をおいても見学、とりあえず登録」
「15.ここは絶海の孤島!? パラオ/Wi-Fiもケータイも繋がらない」
「16.グループホームに引っ越し/娘のいちばん長い日」
「17.エッセイは終わっても人生は終わらない」
「特別対談 篠田節子×名倉直美(聖路加国際病院・形成外科医)/やってみてわかった「ここが知りたい!」乳房再建のほんとのトコロ」
「あとがき というよりその後のご報告」

<感想>
著者は、若くはないが死ぬには早い62歳のとき、浸潤がんと宣告された。
選択の連続と尊厳死など、闘病という言葉がぴったり当てはまる過程に重苦しくなるも、著者が冷静なので救われる。
癌になったら直面するであろう素朴な疑問から専門的なことや、気性の激しい大正生まれの母の認知症介護の実情を、作家目線で面白可笑しく客観的に書いており、勉強になった。
そして、手術後の海外旅行、人体の退化と衛生(肌の清潔)、医療実習用ロボットなど、読み物としても大変面白い。
流石にベテラン作家は違うな。気持ちの切り替えが上手いと思った。
満足度 5.gif



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山本弘 『怪奇探偵リジー&クリスタル』 『神は沈黙せず』
   

高橋恵『笑う人には福来たる』 水野敬也『人生はもっとニャンとかなる!』
   


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posted by ももた at 09:04| 東京 ☁| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月26日

アガサ・レーズンの探偵事務所

英国ちいさな村の謎 N
M・C・ビートン 著
羽田詩津子 訳 「Agatha Raisin and The Deadly Dance」
カバーイラスト 浦本典子

<あらすじ>
アガサ・レーズンは、念願だった探偵事務所を起ち上げ、ミルセスターの中心部にオフィスを開いた。
地元新聞の元カメラマンであるサミー・アレンを雇い、警察の元技術者ダグラス・バランタインと提携を結び、フリーランス契約で支払いをすることにした。
そして、電話番兼秘書として、新しい隣人で国防省の元役人ミセス・エマ・コンフリーを雇う。
迷い猫と犬の捜索や不倫案件などで事務所は繁盛し、エマが探偵として有能だと判ったので、婦人会の書記をしているカースリーのシングルマザーであるカイリー・シムズを電話番として雇った。
そんな折り、サー・チャールズ・フレイスの紹介で、荘園屋敷に住むキャサリン・ラガット=ブラウンから本物の事件調査の仕事が舞い込む。
娘のカサンドラに、株式仲買人ジェイソン・ピーターソンと結婚したら死ぬことになるという脅迫状が届いたのだ。
そこでアガサとエマは、カサンドラの21歳の誕生日を祝うディナー・ダンスパーティ兼婚約発表に潜入して、ゲストを観察する。
しかし、アガサは早とちりの大失態をしてしまいクビになった。
ところが、ビル・ウォン部長刑事が、現場でガンオイルとライフルから排出された空薬萊を見つけた。
アガサはビルの推薦で引退した刑事パトリック・マリガンを雇い、現場に復帰する。そして狙撃事件の調査に乗り出すが・・・

<感想>
今回、アガサの恋愛中毒は小休止。私立探偵のアガサは、エマやサー・チャールズ、パトリックとロイ・シルバーともコンビを組んでいる。何度も命を狙われ、公安部まで出張ってくる。
そして67歳の未亡人でもあるエマが、40代後半のサー・チャールズに本気で恋した挙げ句、ストーカーになるという有り得ない展開だ。凄く面白いコージーミステリだと思う。
でも、一番好ましいと思うのは、アガサたちが猛烈に怒って罵り合いの喧嘩別れをしても、決して互いを見捨てることがないところかな。このシリーズは最強だと思う。続編が楽しみでならない。
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『貧乏お嬢さまの危ない新婚旅行』 『幸運は死者に味方する』 『ヴィンテージガール』
  


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posted by ももた at 08:39| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。