2019年07月18日

青空と逃げる

辻村深月 著
装画・挿絵 佐伯佳美

<あらすじ>
不倫相手とされる俳優・本条拳を乗せて事故を起こした女優・遙山真輝は、医者から女優復帰は難しいと告げられ、退院後、自宅で首吊り自殺した。発見したのは、高校生のひとり息子・佑都だった。本条拳は退院直後、失踪する。
この相次いで起きたスキャンダルにより、本条拳の家族である妻の早苗と小学5年生の息子・力は世間の注目を浴び、マスコミの取材攻勢に晒され、遙山真輝の所属事務所も夫の居場所を執拗に尋ねてくる。力は学校帰りに待ち伏せに遭い、クラスでもいじめに遭っていた。
そこで早苗たち母子は、夏休みの間だけ東京を離れ、状況が良くなるのを待つことにしたが・・・

<感想>
影に怯える母子の逃亡先は、高知・四万十から瀬戸内海に浮かぶ小さな島・家島、そして別府の温泉街へ移り、仙台に飛び、北海道は網走の近くの大空町まで転々と移動する。季節も夏から秋、冬へと移り変わり、物語は3月で終わる。最終章まで父親の音沙汰は無く、母親はドライブインの接客や砂湯の砂かけ師で稼ぎ、子供は学校へも行かず独りで放って置かれる。スリリングなミステリ仕立てになっており、一期一会の人間ドラマに人情を感じられる作品になっている。心に沁みる良いお話だと思った。
しかし、なぜ遙山真輝の所属事務所が本条拳の行方を執拗に追うのか、最後まで分からなかった。子供を守るためと言い訳して手許に置き、逃げ続ける理由も納得できなかった。身勝手な親たちだなと思った。
満足度 4.gif



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『凍りのくじら』   『朝が来る』
   

百田尚樹『夏の騎士』   町屋良平『青が破れる』
   


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2019年07月17日

とっても不幸な幸運

畠中恵 著
カバーイラスト しまざきジョゼ

<内容>
腕っぷしの強い30代半ばのオーナー店長・小牧洋介が仕切る「酒場」を舞台に、100円ショップで買った「とっても不幸な幸運」の缶が巻き起こす騒動を描くファンタジックミステリ。

「序章」「第1話 のり子は缶を買う」「第2話 飯田はベートーベンを聞く」「第3話 健也は友の名を知る」「第4話 花立は新宿を走る」「第5話 天野はマジックを見せる」「第6話 敬二郎は恋をする」「終章」を収録したもの。

<感想>
常連客にしかドアが開かれない「酒場」のオーナー店長・小牧洋介は、本当にどうしようもなくなった者に頼って来られたら、突き放すことができない。
のり子は店長の義理の娘、健也は大学生のウェイター、敬二郎は前店長で洋介の義父、あとは曲者揃いの常連客のエピソード。深刻な話を吹き飛ばす愉快な連作になっており、終章で「酒場」の成り立ちが描かれている。
読後感がとても良い。推理合戦、爆弾騒動などが相俟って凄く面白い人間ドラマだと思う。
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加納朋子『いつかの岸辺に跳ねていく』 湊かなえ『落日』
   

長岡弘樹『赤い刻印』 奥田英朗『罪の轍』
   



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2019年07月16日

絶対に人に見せてはいけない日野市の職員手帳

日野の魅力発見職員プロジェクトチーム 著

<内容>
住みたい街ランキング圏外の日野市が起こした前代未聞の「街おこし」を書籍化したもの。

<感想>
ちゃんと市議会の承認を得て制作しているところがミソなのかな。
Q&A形式になっており、日野市のあれやこれを紹介する日野愛に満ちたユニークな職員マニュアル本だと思う。
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『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』


『公務員版悪魔の辞典』   『日本一おかしな公務員』
   


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2019年07月12日

坂の途中の家

角田光代 著
装画 岩淵華林

<あらすじ>
33歳の専業主婦・山咲里沙子は、設計事務所に勤めている2歳年上の夫・陽一郎ともうすぐ3歳になるひとり娘・文香と吉祥寺のマンションで平穏に暮らしていた。
ところが刑事裁判の補充裁判員に選ばれる。それは、自分と同世代の主婦・安藤水穂が赤ん坊を浴槽に落として溺死させた事件だった。里沙子は浦和にある夫の実家に娘を預け、およそ10日間、毎日霞が関の法廷に出て審理を聞かなくてはならない。
公判が進むにつれ、里沙子は水穂の境遇と自分を重ね合せ、封印していた記憶を思い出してしまう。ネガティブな思考のループに嵌り・・・

<感想>
マタニティーブルー、反抗期の幼児を抱えている母親、母親と息子の連帯、母娘の軋轢などを描き、繊細な女性心理を浮き彫りにしている。子育て中のママさんは身につまされるだろう。
また、先入観や思い込み、狭義の常識と誤解、自己嫌悪と焦燥感などが善き人であろうとする普通の人を追い詰めていき、大事に至る過程に戦慄する。色々考えさせられ、読み応えのある小説だと思う。
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川瀬七緒『スワロウテイルの消失点 』 樋口有介『うしろから歩いてくる微笑』
   


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2019年07月10日

死者の国

ジャン=クリストフ・グランジェ 著
高野優 監訳・伊禮規与美 訳 「LA TERRE DES MORTS」

<あらすじ>
ストリップ劇場ル・スコンクのストリッパー、ソフィー・セレの遺体がごみ処理場で発見された。遺体は全裸で、被害者本人の下着を使って特殊な方法で縛られていた。唇の両端が耳まで切り裂かれ、喉には大きな石が詰められていた。パリ警視庁は規定通りの捜査を全てやったが、結果を出せなかった。
1週間後、フランスの高級官僚をしている筋金入りのSM愛好者である妻・エミリアと離婚調停中のステファン・コルソ警視が、この猟奇殺人事件の捜査を引き継ぐことになった。最愛の息子の親権を勝ち取るには、この事件を解決しなくてはならない。
コルソがチームのメンバー4人と捜査を進めると、ソフィーはSM傾向のあるポルノ映画に出演していた。手がかりを追ってマドリードの美術館へ行き、ソフィーの恋人だと言う元服役囚の画家ソビエスキを目撃するも取り逃がしてしまう。
そうした中、ソフィーの同僚であるエレーヌ・デスモラが殺された。殺害方法が酷似していることからコルソは同一犯と睨む。更に捜査を進め、ソビエスキこそが犯人だと確信するが・・・

<感想>
主人公のコルソ警視には、愛する女性を穢すことで快楽を引き出すという性的な嗜好があり、少年時代に麻薬中毒になって地下室に性奴隷として監禁されていた過去もある。乱暴だし短慮なうえ単独行動を好み、すぐ拳銃を振り回すアクション映画の主人公並みの暴走刑事。見込み捜査や違法捜査、職務違反にでっち上げ、職権乱用も厭わないから警察ではアウトサイダーだ。
他の登場人物もサイコパス、過激なSM愛好家、強姦魔、死体性愛者など、異常者ばかりだ。あまりの悍ましさに辟易してくる。
それに2段組のポケミスで760ページを超えるボリュームも頂けない。凄く疲れた。税抜3000円の価値を見いだせなかったな。
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ダリオ・コッレンティ『血の郷愁』  ジョー・ネスボ『レパード 闇にひそむ獣』
  

ジェイムズ・クラムリー『酔いどれの誇り』 『ダンシング・ベア』
   


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2019年07月09日

とめどなく囁く

桐野夏生 著
装画 内澤旬子

<あらすじ>
早樹の夫・加野庸介は、三浦半島に単独で海釣りに出かけて忽然と消えた。遺体は見つからなかった。
共働きの教員家庭で育った早樹はずっと庸介を待っていたが、7年経ち正式に死亡認定された後、31歳年上の資産家・塩崎克典の後妻となった。
相模湾を望む超高級分譲地である母衣山庭園住宅で穏やかに暮らしていたところ、克典の末娘で早樹と同い年の真矢が、父親と義母を傷つける捻じ曲がった悪意と邪推に満ちた恨みのブログを書いていた。
そして、気が滅入っている早樹に追い討ちをかけるように、元義母の菊美が庸介を見たと言い出す。同じ頃、実家の父も庸介に良く似た男を目撃していた。
そこで早樹は真相を確かめるべく、克典に内緒で庸介の釣り仲間を訪ね歩くが・・・

<感想>
庸介が生きているのか死んでいるのかを知る旅は、妻でありながら知らなかったこと、親友の辛い恋愛や元義母の仕打ちなど、聞きたくなかったことを思い知らされる屈辱と失意に満ちた辛い旅になる。年上の優しい夫との穏やかな生活は一変するのだ。
生存説が浮上するミステリ仕立てになっており、セレブの暮らし向き、創業者一族との関わりなどが相俟って、とても面白い長編小説だと思う。
しかし、庸介の生死判明後、早樹が言い放った言葉に衝撃を受けた。やり切れない結末だったな。
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浅田次郎『天国までの百マイル』『椿山課長の七日間』 伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
  


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2019年07月08日

外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?

内藤正典 著
装画 蜊_太郎

<内容>
「はじめに 世界では、人が国境を越えている!」
「第1章 外国人労働者ってどんな人?移民とどこがちがうの?」
「第2章 難民ってどんな人?」「第3章 移民と難民はどこがちがうの?」
「第4章 日本はどうやって外国人労働者を受け入れるの?」
「第5章 世界に学ぶ、移民、外国人労働者問題」
「第6章 100万人ジャーニー・オブ・ホープ」
「第7章 日本は難民を受け入れてきたのか?」「第8章 外国人と仲良くなろう」

<感想>
そもそも外国人労働者・移民・難民とは、どういう人なのかという定義から入り、その法的根拠や歴史的背景もきちんと説明している。難しい言葉や専門的な知識をひけらかしていないので、取っ付き易く分かり易い。
「外国人労働者を受け入れる場合の問題点」「外国人労働者から移民への移行」「難民条約の定義とノン・ルフールマン原則」など、凄く勉強になった。
また、外国人労働者受け入れ先進国の前例(主にドイツ)もあり、興味深く考えさせられる。
そして、アラン・クルディ君(3歳)の悲劇を一面で報じたトルコ紙は、何度見ても涙が出てくる。
外国人労働者・移民・難民問題の入門書に最適だと思う。
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『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』  『知っておきたい入管法』
   


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2019年07月05日

おらおらでひとりいぐも

第158回芥川賞受賞
若竹千佐子 著
イラスト 小幡彩貴

<あらすじ>
桜子さんが結婚を3日後に控えた24歳のとき故郷を離れてかれこれ50年、最愛の亭主は15年前に心筋梗塞で呆気なくこの世を去った。一生懸命育てたはずの息子と娘は、とっくに疎遠になっている。ずっと専業主婦だった桜子さんを訪ねてくる人もいなければ求められてもいない。
去年の秋、16年一緒に住んだ老犬を亡くしてからというもの、桜子さんはかつての新興住宅の古びた家で独り暮らしていた・・・

<感想>
桜子さんの独白を方言で綴っている。独居老人を描いたユニークな作品だと思う。
桜子さんの部屋は散らかり放題、身なりも構わない。日々は単調で、テレビやラジオの視聴と垂れ流し、音楽もない。お年寄りになると持病だけでなく、目や耳も悪くなるのだった。
そして寂しくなったら病院へ行き、帰りに喫茶店に寄る。あとは亭主の墓詣でだけ。生きる目的も趣味もないから、頭の中は絶対に変えられない過去を反芻して、ひとり問答している。オレオレ詐欺の被害にも遭う。
また、幻覚と妄想癖もあり、思い出に浸ってばかりいる。自分を愛しく思えるのは素晴らしいが、こんな老後は嫌だと思った。
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門井慶喜『銀河鉄道の父』 吉村昭『間宮林蔵』 童門冬二『伊能忠敬:日本を測量した男』
  


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2019年07月04日

第四の暴力

深水黎一郎 著
装画:リッピ『聖母子と二天使』

<内容>
「生存者1名あるいは神の手(ラ・マーノ・デ・デイオス)」「女抛春(ジョホールバル)の歓喜/樫原事件のない世界」「童派(ドーハ)の悲劇/樫原事件のある世界」を収録したもの。

<感想>
1話目の主人公は自然災害被害者遺族、次はテレビ局のプロデューサー、最終話は超エリートサラリーマン。
第4の権力であり、第4の暴力でもあるマスコミ批判と苦言、既得権益の分厚い壁、世論誘導など、共感するところもあり、樫原の主張と2話目のオチは痛快だ。バカバカしいけれど笑える。
しかし、最終話は頂けない。タレント議員の増加による芸能人特別保護法の成立は皮肉が効いているけれど、向上心が高く真面目な努力家を殺しては拙いでしょ。不快感が残る駄作だと思った。
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道尾秀介『いけない』  櫛木理宇『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』
   


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2019年07月03日

飢え渇く神の地

鴇澤亜妃子 著
カバーイラスト 岩本ゼロゴ

<あらすじ>
遺跡地図屋の青年カダム・オーウェンは、10年もの間、アドハラの砂漠で行方不明になった育ての親であり、古代王国の大墓地発見で有名なロジェ・ブランシュ教授とその娘夫婦ソフィーとオリヴィエ、孫娘のエレナを探し続けていた。
ある日、ジャン=レオン・ベルナール卿と名乗る気障な宝石商が現れ、カダムを道案内に雇う。
レオンを宝石売買が盛んなザーフェルの町へ連れて行くと、ガラ・シャーフ教団という得体の知れない一団と遭遇する。
その中には、行方不明となっているエレナに良く似た少女ユリノハがいた。ユリノハは、レオンの友人の息子で治安警備隊の一員でもあるエイダンに呪いをかけ、3日以内に教団の砦に来なければ死ぬと伝える。
かくしてレオンとカダムはエイダンに付き添い、それぞれの思惑を抱えて西砂漠ダリアの奥にあるトクサの砦へ乗り込むが・・・

<感想>
目まぐるしく場面が変わり、次から次へと謎が出てくる。人間関係も複雑だ。
スリリングなミステリ仕立てになっており、餓え渇き満たされることを知らない神ダリアと豊穣の女神アシュタールの神話、女神の心臓の守り神シュトリの伝説、砂漠の地下通路が張り巡らされた地底王国、どんな願い事も叶えてくれる願い石などが相俟って、とても面白い冒険ファンタジーだと思う。
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『宝石鳥』 廣嶋玲子『秘密に満ちた魔石館』 ボストン・テラン『ひとり旅立つ少年よ』
  


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読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。