2020年04月06日

「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校

ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯
ヘルマン・フィンケ 著
高田ゆみ子 訳 「ICH SEHE IMMR DEN MENSCHEN VOR MIR」

<内容>
序文 私の眼の前にいるのは、いつも人間だ

第1部 カトリシズムと身体文化 第1章 ヘッセン州の村で/第2章 第一次世界大戦…喜び勇んで命令に従った/第3章 ワンダーフォーゲルと芸術家の娘…幸せな若い二人/第4章 全身全霊で教育に打ち込む」

第2部 批判的服従 第5章 私もその一員なのだ/第6章 ポーランドで…捕虜施設の建設/第7章 押し寄せる恐怖…不幸な運命に心が切り裂かれる思いだ/第8章 西への進攻…意見の相違/第9章 異動/第10章 ゲットー…我々への非難そのものだ/第11章 スポーツと毒ガス防御担当将校として…国防軍競技大会/第12章 寛容と共感…いったい誰が私たちに憎しみを植えつけたのでしょう?/第13章 ナチズムとの決別」

第3部 共犯的罪悪感と、救済による抵抗運動 第14章 ユダヤ住民の殺戮という大罪/ 第15章 ユダヤ人の運命…彼らはなぜ、沈黙したまま抗議の声をあげないのか?/第16章 人狩り、あるいは悪の凡庸さ/第17章 ゲットー蜂起…我々は慈悲に値しない、みんな共犯だ/第18章 苦境の人々のために…救済による抵抗運動/第19章 最後の休暇 1944年聖霊降臨祭…君と共に過ごせて本当に良かった!/第20章 救える人はみんな救いたい/第21章 最も大胆で危険な救済活動…耐え抜け!」

第4部 ソヴィエトの捕虜となって 第22章 君たちのことがいつも気がかりだ/第23章 救出への試み…神経戦/第24章 苦難のときは終わった…死は突然に」

エピローグ 遅すぎた顕彰…諸国民の中の正義の人」

<感想>
教育者にして博愛主義者でもあったドイツ・ヘッセン州出身のヴィルム・ホーゼンフェルト大尉(1895年5月2日〜1952年8月13日)の生涯を描いた評伝。「戦場のピアニスト」とは、ユダヤ系ポーランド人のピアニストで作曲家のウワディスワフ・シュピルマン(1911年〜2000年)のこと。
ヴィルム・ホーゼンフェルトは当初、ヒトラーを信奉していたが、任地ポーランドでの6年の間に、迫害された数多のポーランド人やユダヤ人を救済し、ナチス体制批判者に転じた。ユダヤ人迫害について情報を集め、ナチスの犯罪を日記に綴り、その記録者となった。
しかし、ソヴィエトの捕虜となり、情報将校の軍歴が災いして、ミンスクの軍事法廷で懲役25年の実刑判決を言い渡された。7年もの捕虜生活を送り、戦犯として獄死した。彼の救済活動は尊いと思うが、人生の皮肉も感じた。
ナチス政権はプロパガンダを信じたドイツ国民が選んだ。その後、不信感を持っても、騙されていると判っても、嫌気が差しても、国家権力を手中にした野蛮な暴力組織には抗えない。一軍人にはドイツ軍の暴虐を止める術は無い。深く考えることを止めてしまった、強権政治下の軍人の姿を垣間見ることができ、考えさせられた。
国民の命と安全を一切気にかけない政府なんて害悪でしかないと思った。
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『戦場のピアニスト』   『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』
   

『白バラを生きる』  インゲ・ショル『白バラは散らず ドイツの良心ショル兄妹』
   

『ピアニスト 奇跡の生還』   『ゾフィー21歳 ヒトラーに抗した白いバラ』
   


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2020年04月03日

ザ・チェーン 連鎖誘拐

エイドリアン・マッキンティ 著
鈴木恵 訳 「THE CHAIN」

<あらすじ>
アメリカのマサチューセッツ州プラム島。11月のある木曜日、13歳の少女カイリーが見知らぬ男女に誘拐された。
およそ45分後、発信者不明の電話があり、シングルマザーのレイチェルは娘が誘拐されたことを知る。
カイリーを解放してもらうには、法執行機関に通報できない。身代金2万5千ドルをビットコインで送金し、レイチェルは標的を選び、その家族の子供を誘拐して、連鎖誘拐システム<チェーン>を継続させなくてはならない。
誘拐犯の息子も人質にとられていた。レイチェルが誘拐を実行して身代金を払えば、その息子は解放される。レイチェルの標的が誰かを誘拐して身代金を払ったら、カイリーは解放される。失敗したり、<チェーン>の指示に逆らうと、レイチェルも娘も殺される。
レイチェルは娘を取り戻すべく、銀行でお金を借りて身代金を払い、被害者から加害者へ転じる。姪のカイリーを溺愛している、元義兄の退役軍人ピートを引き入れ、無関係の子供を誘拐するが・・・

<感想>
上巻は、連鎖誘拐システム<チェーン>に組み込まれてしまったレイチェルとカイリーを描き、スリリングな展開だ。標的を選ぶ方法、誘拐計画など、とても面白いと思う。
しかし、我が子を救うため、他人を傷つける親たちに共感できなくなってくる。主人公が邪悪な者たちの言いなりになるのは、どうにも居心地が悪い。
下巻は、試練を乗り越えたレイチェルが、一度でも脅迫に屈すれば永遠に終わらない、連鎖誘拐システム<チェーン>の卒業生になるだけだと気づき、その正体を明かにすべく行動を起こす。癌の薬物療法患者と薬物依存者が、FBIとカルテルをバックにした社会変質者に立ち向かうのだ。ありきたりの筋書きと予想通りの結末だが、話のテンポが良くて楽しい。痛快だったな。
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デヴィッド・コープ『深層地下4階』  J・D・パーカー『嗤う猿』
   


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2020年04月02日

巡査さん、フランスへ行く?

英国ひつじの村(エヴァン・エヴァンズ巡査)シリーズ C
リース・ボウエン 著
田辺千幸 訳 「Evan and Elle」
カバーイラスト 石山さやか

<あらすじ>
スランフェア村の近くにあった古い礼拝堂が、高級フランス料理店になった。
パブでその話題が持ちきりの夜、村人たちと一切関わりを持とうとしない、よそ者のイングランド人夫妻が所有するコテージが全焼した。火事の原因は放火だった。焼け跡から「帰れ」と書かれた手紙が見つかる。
鼻の利く犬を連れた放火捜査専門家ピーター・ポッターがやって来て、エヴァンズ巡査に村人たちの聞き込み調査を命じる。
そうした中、フランス料理店に脅迫状が届き、村人たちが嫌っているエヴェレスト・インの物置小屋が放火された。
続いてフランス料理店が全焼し、焼け跡から男の死体が見つかる。解剖の結果、死因は刺殺だった。オーナーシェフのマダム・イヴェットに疑惑の目が向けられる。
北ウェールズ警察のワトキンズ巡査部長とエヴァンズは、マダム・イヴェットの素姓を調べるため、フランスへ旅立つが・・・

<感想>
連続放火事件のプロファイリングに一致したのは、村の11歳の少年。連続放火事件、マダム・イヴェットと殺人事件の調査を進めるほど複雑な様相になって行き、何とエヴァンズ巡査は3日間もスランフェア村を留守にして本格的な捜査をしている。
そして、相思相愛の恋人がいながら若いグリニス巡査に惹かれたり、刑事の仕事に心が躍り、刑事の訓練に申し込む気にもなる。それらのエピソードや人間模様がとても楽しく、心が和むコージーミステリだと思う。
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M・J・カーター『紳士と猟犬』 スーザン・イーリア『スコットランドの危険なスパイ』
  


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2020年04月01日

ダンスシューズで雪のシベリアへ

あるラトビア人家族の物語
サンドラ・カルニエテ 著
黒沢歩 訳 「AR BALLES KURPEM SIBIRIJAS SNIEGOS」

<内容>
ラトビアは50年間に亘って連続3度もソ連とドイツに占領された。ソ連体制化において、極寒のシベリアに追放されたあるラトビア人家族3世代の記録。
ラトビアの独立回復後、入手可能となった歴史資料と文献、さらに家族の日記とシベリア体験者の記録や取材をもとに、祖父母と両親の足跡を描いた自伝的な作品。

「著者の家系図/主要登場人物写真付き/地図・ラトビア主要都市及び本文に登場する地名/地図・文中に登場するロシア圏の主な地名/グラフ(強制労働収容所本部)地図」

「はじめに/前兆/占領/追放/私の祖父ヤーニス/ヴィヤトラグの十字架/ラトビアにおける戦争/銃殺か、もしくは無罪を/強制移住と飢餓/変化/祖母エミリヤ/無法者の家族/ママが雨水で髪を洗ってくれる/これ以上子どもを貢はしない/長い家路/おわりに」

「訳者あとがき/年表・家族の動きと歴史的背景/参考文献一覧」

<感想>
著者は1952年、追放者の両親のもとシベリアの寒村トグルで生まれた。人民戦線の活動家としてラトビアの独立運動を主導した後、在フランス大使、外務大臣などを経て、現職は欧州議会議員を務めているそうだ。
本書は、祖父の苦難の道、支え合う祖母と母の絆など、歴史に翻弄される個人の悲劇を浮き彫りにしており、ロシアとラトヴィア近代史が相俟って凄く読み応えのある自伝的作品だと思う。
そして、ソ連とドイツに国が占領されたラトビア民族の悲劇である大量追放と強制移住、捕虜のシベリア抑留は、ホロコーストに並ぶ蛮行だと思った。
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『ソビエト・ミルク』  ヒシャーム・マタール『帰還』  カレン・レビン『ハンナの鞄』
  


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2020年03月31日

不死鳥少年

アンディ・タケシの東京大空襲
石田衣良 著
装画・挿絵 望月ミネタロウ

<あらすじ>
父はアメリカ人、母は日本人のタケシは、日米開戦の前年に母とアメリカから帰国した。
母の実家である東京の下町、本所区(現墨田区)江東橋の町工場で暮らして5年、大日本帝国の中学生として近くの軍需工場へ勤労奉仕に行き、1日中働いていた。
終日空腹を覚悟し、真夜中の空襲にも慣れた1945年3月10日、米軍のB29が東京の下町にM69油脂焼夷弾を落とした。密集した家々に火がつき、炎が拡散し、焼夷弾を落とされた街は火の海となった。次々と焼夷弾が落ちてきて何度も死にかける中、タケシたちは必死に逃げ回るが・・・

<感想>
戦時下に日米混血児として生きる苦難、軍需工場の勤労奉仕と虐め、幼馴染み3人の友情などを描き、東京大空襲のスリリングな描写で読ませる。
しかし、どこかで見聞きしたようなエピソードが並び、内容が浅い。大人には物足りなく、ヤングアダルト向けの本だと思う。それにSF的設定は、身近に体験者がいるので頂けないな。
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『感染列島』   『アウトブレイク』
   

岡田晴恵『隠されたパンデミック』   高嶋哲夫『首都感染』
   


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2020年03月30日

レイトショー

ロス市警女性刑事レネイ・バラード・シリーズ @
マイクル・コナリー 著
古沢嘉通 訳 「THE LATE SHOW」

<あらすじ>
ハワイ出身の30代半ばの独身女性刑事レネイ・バラードは、2年前、上司であるオリバス警部補をハラスメント告発するもパートナーのチャスティン刑事に裏切られ、ハリウッド分署深夜勤担当に飛ばされた。
ある夜、サンタモニカ売春通りの駐車場で瀕死状態の男娼ラモンが発見された。
年輩女性からのクレジットカード詐欺の通報に応えて出動中のバラードとジェキンズ刑事は、病院へ駆けつけて「逆さまの家」という手がかりを掴む。
続いて、サンセット大通りのクラブで銃撃事件が起き、4人が死亡した。ジェキンズは現場へ直行し、バラードは5人目の被害者の情報収集が済み次第現場へ向かうよう指示される。
しかし、銃撃事件の被害者は意識が戻ることなく、病院到着直後に死亡した。クラブ銃撃事件の捜査責任者オリバスに報告すると、近親者への通知を任される。
バラードはオフ日や深夜勤務明け、単独シフトの時間を利用して、独自調査に乗り出す。
そうした中、チャスティンが自宅ガレージで銃殺された。バラードは彼が何かを嗅ぎつけ、それが原因で殺されたと睨む。
やがて警察官犯人説に辿り着くが、彼女の背後には邪悪極まりない男が迫っていた・・・

<感想>
身長170p体重60s弱の主人公レネイ・バラードは、14歳のときサーファーの父親が溺死、母親のマカニが育児放棄したのでホームレスとして1年間過ごし、16歳のとき父方の祖母に引き取られた。ハワイ大学卒業後、ロサンジェルス・タイムズの記者を経てロス市警に入った。エリート部門の強盗殺人課刑事となるが、上司とぶつかり、深夜勤担当に飛ばされた。
清掃業者から中古で買ったヴァンを活動の拠点にしており、趣味はパドルボーディング。手持ちのスーツ全部を分署のロッカーに保管、祖母の家を住所にしている。飼い犬のローラは、ボクサーが混じっているピットブルで、ホームレスの男から買い取った。バラードが勤務のときは、ペットシッターのセイラに預けている。
複数の単独捜査を同時進行でテンポ良く描いており、時々山猫と呼ばれるヒロインの魅力的なキャラクター造形と、鮮やかな逆転劇が相俟って、凄く面白い警察ミステリだと思う。続編が楽しみでならない。
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<ロス市警女性刑事レネイ・バラード・シリーズ作品リスト>
@『レイトショー』 A『Dark Sacred Night』(2018) B『The Night Fire』(2019)


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2020年03月29日

季節外れの雪


桜が満開なのに、季節外れの雪が降っている。
屋根や道にも積もって一面雪景色。結構吹雪いている。道理で寒いはずだ。
コロナでどこへも行けないから構わないけれど。1日中、降らないといいな。

真山仁『神域』   高嶋哲夫『首都感染』
    


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ラベル:季節外れ
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2020年03月26日

夕陽の道を北へゆけ

ジャニーン・カミンズ 著
宇佐川晶子 訳 「AMERICAN DIRT」
装画 agoera

<あらすじ>
メキシコのアカプルコで書店を営むリディアは、新聞記者の夫セバスチャンと8歳の息子ルカと幸せに暮らしていた。
しかし、カルテルの動きが活発になり、暗い影が街を覆い始める。
そうした中、セバスチャンが書いた記事のせいで、カルテルのボスのひとり娘が自殺した。カルテルはリディアの姪の誕生パーティーに侵入し、家族16人を撃ち殺した。カルテルのボスの血の復讐だった。
リディアとルカはバスルームに隠れて命拾いするが、カルテルの殺し屋が迫っていた。ボスの影響力はメキシコ全土に広がっている。そこでリディアとルカは難民を装い、カルテルの力が及ばないアメリカへ行くことにしたが・・・

<感想>
孤立無援となった母子の命懸けの逃避行を描いた、凄く面白いロードノヴェルだと思う。
アメリカの移民は、より良い暮らしを求めて中南米からアメリカを目指していると思っていた。
しかし本書の難民の共通点は、理不尽な暴力と悲惨な状況に追い詰められ、進退窮まった人々だった。
そしてメキシコは、警察組織や国境警備隊、バスの運転手とホテルマンにも、麻薬密売組織のメンバーが入り込んでいる異常社会だった。
母子はカルテルの目を掻い潜って、貨物列車の屋根に飛び乗り、移民保護施設へ逃げ込み、国境地帯の町まで否応なく動き続ける。安全なルートを選んでも危険な場所があり、目的達成のために砂漠越えをしなければならない。その行程はスリル満点だ。そして色々な事情を抱えつつも希望を失わず、必死に生き延びようとする人々の姿に勇気を貰えると思う。
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ジョナサン・フランゼン『ピュリティ』   ネイサン・ヒル『ニックス』
   


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2020年03月25日

警部ヴィスティング カタリーナ・コード

2019年英国ペトローナ賞(英訳北欧ミステリ・オブ・ザ・イヤー)受賞
警部ヴィスティング・シリーズ K
ヨルン・リーエル・ホルスト 著
中谷友紀子 訳 「THE KATHARINA CODE」
カバーイラスト 光嶋フーパイ

<あらすじ>
ノルウェー南部の小都市ラルヴィク。
24年前、謎の暗号を残し、道路局職員カタリーナ・ハウゲンが失踪した。ヴィリアム・ヴィスティング警部は、遺体も犯行現場も無いにも拘らず、当初から殺人事件として捜査を行ったが、解決できなかった。
捜査が打ち切られた後、捜査資料を家に持ち帰り、何度も再読し、カタリーナの夫マッティンと親交を続け、毎年事件が起きた日には、マッティンの家を訪問するのが習慣になっていた。
ところが今年は、マッティンが留守で連絡もつかず、会えなかった。
翌日、国家犯罪捜査局に新設された未解決事件班のスティレル警部から、マッティンをナディア・クローグ誘拐事件の最重要被疑者と見做し、再捜査していると告げられた。
ナディア誘拐事件は、カタリーナ失踪事件の2年前に起きていた。当時は検出不能だった脅迫状の指紋が、マッティンのものと一致していた。それにマッティンが所有するランゲン湖畔の山小屋は、人を監禁するのに最適な場所だった。
脅迫状に用いた新聞が明らかになったとき、ヴィスティングはマッティンの関与を確信する。スティレルの捜査協力要請を受け入れ、マッティンの心中を探り始めるが・・・

<感想>
ふたつの事件捜査と、数年後には定年を迎えるヴィスティングの私生活を丁寧に描き、読み応えがある。それに暗号解読、手段を選ばない強引なスティレル、事件の謎に迫るヴィスティングの娘リーネが相俟って、とても面白い。
2日間に及ぶヴィスティングとマッティンの男同士の会話、神経戦ともとれる腹の探り合いは圧巻だった。派手な展開や逆転劇もないが、人生ドラマが心に沁みる。味わい深く、感動的な警察ミステリだと思う。
先に翻訳された『猟犬』はシリーズ8作目に当たり、年1作のペースで出ている本シリーズは、2019年の時点で14作目まで発表されているそうだ。続編が待ち遠しくてならない。
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『猟犬』 C・J・ボックス『逃亡者の峡谷』 ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』
  


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2020年03月24日

ノンフィクションにだまされるな!

百田尚樹『殉愛』上原善広『路地の子』のウソ
角岡伸彦 著

<内容>
「第1部 百田尚樹『殉愛』裁判の研究」
「第2部 上原善広『路地の子』を読む」
「第3部 西岡研介×角岡伸彦 対談ノンフィクションにだまされるな!」

<感想>
たった2冊の本だけを取り上げて、偽ノンフィクションと批判している。凄い本だと思った。
以前、上原善広『路地の子』を読んだことがあるので、そそられた。当時、私小説なのか、ノンフィクションなのか迷ったが、出版社を信用してノンフィクションに分類した覚えがある。本書では嘘と矛盾を指摘しており、被差別部落や同和問題のことは殆んど知らないのでその多さにショックを受けた。
本書を含め、ノンフィクションに騙されないよう勉強しなくてはと思った。
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『歴史戦と思想戦 歴史問題の読み解き方』  『知りたくないではすまされない』
   


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読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。