2018年09月21日

漂流家族

池永陽 著
装画 日端奈奈子

<内容>
「父の遺言」「いやな鏡」「若い愛人」「紅の記憶」「不鈴」「十年愛」「薄いカツレツ」「バツイチ」を収録した短編集。

<感想>
打算と意地と欲の突っ張り合い、男手ひとつで育ててくれた父の葬式にも出なかったひとり娘が離婚後その深い愛情と親心を知る話、地味で見映えのしない女が別れ話をされてストーカーになる話など、女性の嫌な面ばかり読まされた感がする。
中でも最終話の、「女は母親の前に、まず女」と呪文のように唱え続けて自分を正当化する母親は最悪だと思った。小学3年生のひとり息子の心情を思うと不憫で切なくなる。そして、先輩シングルマザーのアドバイスから気づきを得て大事に至らず、ホッとした。この話が最後で本当に良かった。
しかし、何故『漂流家族』というタイトルにしたのか訳が分からない
満足度 3.gif



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深緑野分『ベルリンは晴れているか』   大崎梢『ドアを開けたら』
  


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2018年09月20日

骨を弔う

宇佐美まこと 著
装画 西川真以子

<あらすじ>
小学5年生のとき、大澤哲平と本多豊、水野京香と田口正一は、幼馴染みの佐藤真実子に押し切られて、理科室の骨格標本をバラバラにして山中に埋めた。小学生が経験するにしては荒っぽい冒険だったが、真実子はこれを「骨を弔う」儀式だと言っていた。
29年後、前日の川の増水により堤防の土が抉られて、埋められてから数10年は経っている骨格標本が見つかった。
1カ月後、本多豊が「あれは骨格標本ではなく本物の人骨だった」と荒唐無稽な話をする。哲平のミステリ好きの同居人朱里は興味を示す。
しかし、哲平たちが生まれ育った町は、28年前に全住民が退去してスポーツ公園になってしまった。骨を盗んだ真実子は行方不明になっていた。
骨の由来が気になる豊は水野京香と田口正一を訪ね歩き、謎を解こうとするが・・・

<感想>
子供だった頃に見聞きしたことや、ただ目の前を流れて行った出来事が深い意味を持ってくる。故郷の景観が失われても人々の記憶は消えない。
作者名とタイトルからホラーを想像していたが、不気味なのは冒頭だけで後は自分探し、或いは再起ものみたいだった。
当てが外れた感はあるものの、人生半ばにして転機を迎えた幼馴染みのドラマはそそられる。豊の父親に日本人の心意気を見た。
そして骨の由来とそれに纏わる悪事、犯罪が明らかになり、これで終わりかと思いきや、洒落たオチが待っていた。思わずニンマリしてしまう。作者の技巧が光るミステリだと思う。
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2018年09月19日

魔導の矜持

Sword of dignity
真理の織り手・シリーズ B
佐藤さくら 著
装画 岩本ゼロゴ

<あらすじ>
ラバルタ内乱の停戦から7年後、カデンツァ自治区の境界線付近で再び武力衝突が起きていた。魔導士への迫害も日に日に悪化していた。
そうした中、私塾が村人に襲われ、16歳になってもまだ半人前の魔導士デュナンは、私塾きっての問題児アース、入塾したばかりの9歳のルーティとパスカル、この3人の弟妹弟子を連れて魔導士狩りから必死に逃げていた。
力尽きて行き倒れていたところ、バースフィールド領の貴族の庶子ノエとその森番で元騎士のガンドに拾われる。
デュナンは咄嗟に魔導士に追われていると嘘をつき、ルーティの祖父に保護を求める心算だと言ったところ、ノエは送り届けようと申し出る。
かくして、父から無能者の烙印を押された青年と戦争のトラウマを抱えた大人とガンドの飼い犬ルー、変な子だと呆れられてきた魔導士と魔導士の卵による国境越えの逃避行が始まった・・・

<感想>
どうやらこのシリーズは、作品ごとに主人公が違うようだ。内容も1作目はレオンとゼクス師弟の修業と絆、魔導士の反乱を描いた戦争物、2作目は学園物で友情とエルミーヌの魔導士の復活を描いており、本書は落ちこぼれ集団の逃亡劇。
巻を重ねる度、キャラクター造形が巧くなっている。
運命を切り拓いていく魔導士を描いた、とても面白いファンタジーだと思う。
そして「生まれついての落ちこぼれで、努力しても全然ついていけなくて、それでも必死に生きている人間がいる。頑張ってない人間なんかこの世にいるもんか!」というデュナンの叫びが心を打つ。
信頼に応えたい、気弱な自分に勇気をくれた存在を守りたいという思いが人間を成長させる。弱くて臆病で落ちこぼれだけど、もがきにもがいて必死に生き抜けば自分を好きになれる。試練を乗り越えたとき、運命が変わり、未来が開ける。そんな希望が芽生え、勇気を貰うと同時に感動した。続きが楽しみでならない。
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マリア・V・スナイダー 『最果てのイレーナ』  『イレーナ、失われた力』
   


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2018年09月18日

ブルックリンの少女

ギヨーム・ミュッソ 著
吉田恒雄 訳 「La fille de Brooklyn」

<あらすじ>
結婚式を3週間後に控え、人気警察小説家のラファエル・バルテレミと小児科の研修医アンナ・ベッケルは、夏の終わりのコートダジュールで休暇を楽しんでいた。
しかし、ラファエルが謎めいたアンナの過去を問い詰めた結果、想定外の秘密を突き付けられる。そしてアンナは、衝撃のあまり冷静さを欠いてしまったラファエルの前から姿を消した。
翌日、ラファエルはパリに帰り、隣人であり親友でもある国家警察組織犯罪取締班の元警部マルク・カラデックの助けを借りて、アンナが隠し持っていた大金と偽造身分証明書を発見する。
ラファエルとマルクは、アンナに見せられた3つの焼死体の写真の調査を進めつつ、失踪したアンナの過去の足取りを遡る。すると、ラファエルが愛する女性は他人になりすましていたことが判る。そして彼女に関わった人々が次々と災難に見舞われる。過去にも不審な事故や事件が起きていた。
ラファエルとマルクの調査は、とんでもない領域に踏み込んで行く・・・

<感想>
大まかな筋立てを予想したところ、さらりとかわされた。
テンポの良いストーリー展開に、ラファエルの恋愛歴と育児生活、マルクの無料奉仕などを絡ませて過去へと遡り、ラファエルが愛する女性の衝撃的な半生と複雑な構造になっている真相が明かされて行く。
事件の構成力に長けている作家の視点とハンターの習性が面白く、想像力が豊かで心配性の主人公と退職しても刑事だと言い張り身分詐称する老人に急き立てられるようにして、一気読みしてしまった。
拉致監禁被害者とその遺族の心痛や悲壮、関係者の罪悪感、大西洋を跨いだ巨大なドミノ現象と相俟って、凄く面白いミステリだと思う。
しかし、悪者は野放しのままであり、結末とその後を読者に委ねるというのも好きではない。都合よく散々話を広げながらこれはないと思った。
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『天国からの案内人』   テス・ダイヤモンド『危険な夜と煌めく朝』
   


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2018年09月14日

真夜中の太陽

ジョー・ネスボ 著
鈴木恵 訳 「MIDNIGHT SUN」

<あらすじ>
フルタイムのドラッグの売人だったヨン・ハンセンは、人生で何よりも大切な娘アンナの高額治療費の必要に迫られて、ノルウェーの麻薬王である猟師の集金人兼始末屋となった。
しかし、死を招くミスを犯してしまい、殺し屋に追われる身となった。
オスロを出てから70時間、1800キロの逃避行をして極北の地コースンに辿り着いた。
教会で仮眠していたところ、巡回説教師ヤーコブ・サラの娘レアとその10歳になる息子クヌートに声をかけられた。彼はウルフと名乗り、狩猟目的だと伝えると、狩猟小屋に案内される。
小屋に泊まって3日後、猟師の手下、ヨンニ・モウに発見されるが、何とか生き延びた。そしてレアに、これまでの経緯を全て打ち明ける。親子と親密になり、人の善意を信じているレアに恋をする。
しかし、モウは諦めていなかった。手下2人と犬を連れて再び彼を殺すべく舞い戻って来た・・・

<感想>
舞台となるコースンは、ノルウェー人とは異なる文化を持つ先住民族サーミ人が居住しており、夏の間は太陽の沈まない百夜となる。30年以上前に終わった戦争の傷跡が、人々の心と土地に根強く残っている。著者はミステリ作家として有名だが、ミステリ色は殆んど無い。物や宗教の価値観、家族の有り様も違う。パソコンも携帯も出てこない1978年のお話。
主人公はヘマをしでかして死を宣告されたチンピラで、面倒なことから逃げ出すタイプ。信仰心の篤いレアはその正反対。そんなふたりの再生を描いた感動的な小説だと思う。
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『その雪と血を』   ネレ・ノイハウス『悪しき狼』
   

アンデシュ・ルースルンド『兄弟の血―熊と踊れU』
   


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2018年09月13日

面従腹背

前川喜平 著

<内容>
38年に及ぶ公務員生活を振り返り、理想と組織の現実との矛盾や相克の経験、すなわち面従腹背の日々を思い出すままに書き連ねたもの。

「はじめに 個人の尊厳、国民主権」
「第1章 文部官僚としての葛藤」
「第2章 面従腹背の教育行政」
「第3章 教育は誰のものか」
「第4章 特別座談会 加計学園問題の全貌を激白/前川喜平(前文部科学事務次官)/寺脇健(京都造形芸術大学教授)/倉重篤朗(毎日新聞専門編集委員)」
「おわりに 面従腹背から眼横鼻直へ」
「面従は一切なし Twitterなら何でも言える ほぼ独り言の「腹背発言集」」

<感想>
元エリートだけに、何でもかんでも暴露して溜飲を下げるという下世話な話になっていない。
加計学園問題は報道の域を出ていないし、当然新事実もない。
少し期待ハズレだったが、国民の教育権と国家の教育権、教育勅語の復権、政治家の圧力など、教育行政や官僚の仕事に興味のある方には面白い読み物かもしれないと思った。
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青木理『日本会議の正体』   黒田福美『それでも、私はあきらめない』
   


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2018年09月12日

HUNTER×HUNTER bR6 発売予定!

冨樫義博 作
ラベル:冨樫義博
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2018年09月11日

魔導の福音

Blessed darkness
真理の織り手・シリーズ A
佐藤さくら 著
装画 岩本ゼロゴ

<あらすじ>
ラバルタの東に位置する、沈むことのない太陽と称えられている大国エルミーヌでは、魔導は禁忌とされてきた。生まれつき体に導脈を持つ者を魔物棲みと呼び、社会から排除していた。
エルミーヌ北西端に位置するエルー領バスタ村の貴族の嫡男カレンス・ドナテアは、口の利けない美しい妹リーンベルと共に何不自由ない子供時代を過ごしてきた。
12歳のとき、郊外に祖母と暮らす町医者の息子サイ・レスカと知り合い、3人は親友となる。
16歳のとき、リーンベルが魔物棲みだと発覚し、幸福な日々に終止符が打たれた。村では魔物棲みは神のもとへ還されるのがしきたりだった。
カレンスはリーンベルの葬儀の翌年王都リムリアへ行き、エリート校エルミーヌ王立学院に入学しする。学院初の女性生徒であり、現在勘当中の名門貴族の令嬢でもある同性愛者の美女アニエス、その良きライバルでイザール家の嫡男ヴィクターと親友になる。
4年後、父危篤の知らせを受け、帰郷する。10日後父が亡くなった。カレンスは、リンズ薬を投与されて動けない状態で隠匿されている魔物棲みの妹を託されるが・・・

<感想>
『魔導の系譜』の続編だが、普通の青年カレンスの物語になっている。読み始めは戸惑ったが、すぐカレンスとアニエスとヴィクターの友情を描いた学園ものに魅了された。とても楽しい姉妹編だと思う。
そしてカレンスとサイの絆、苦悩と葛藤と成長、魔導士の復活とカンネ女王の政策などを描き、前作よりも奥行きを感じた。魅力的なキャラクターと相俟って凄く面白いファンタジーだと思う。
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マリア・V・スナイダー 『毒見師イレーナ』 『イレーナの帰還』
   


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2018年09月10日

日航機123便墜落 最後の証言

堀越豊裕 著

<内容>
「プロローグ 新聞へのリークを告白した男」
「第1章 御巣鷹という磁場」
「第2章 米紙にもたらされたリーク」
「第3章 ボーイング社長の苦衷」
「第4章 消えない撃墜説を検証する」
「第5章 墜落は避けられなかったか―機長たちの証言」
「第6章 スクープ記者たちの33年」

<感想>
関連本は沢山出ているので、どうせ同じようなものだろうと高を括っていたが、第1章から感動的なエピソードにぶち当たり、涙が溢れる。この悲劇を風化させてはいけないと痛感する。心して読まねばと襟を正すも、関係者の思いが心に突き刺さり、矢張り涙が止まらない。巧みな導入部にまんまと嵌められた感がする。
ともあれ著者は、米国の内部資料や米国側関係者へのインタビュー取材などを基に、事故原因は事故調の報告書で概ね正しいとしている。その根拠や解説は分かり易く説得力も有り、誤射説よりも受け入れ易い。
しかし、青山氏の主張を完全に払拭しているとは言い難い。どうしても違和感は消えない。日本での調査取材をもう少し丁寧にして欲しかったな。
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川北宇夫『墜落事故のあと』  青山秀子『日航123便墜落 遺物は真相を語る』
   


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ラベル:堀越豊裕 星4
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2018年09月07日

モーセの災い

シグマフォース・シリーズ J
ジェームズ・ロリンズ 著
桑田健 訳 「The Seventh Plague」

<あらすじ>
スーダン北部の発掘プロジェクトに派遣された大英博物館の調査隊が砂漠で消息を絶った。
2年後、調査隊を率いていたハロルド・マッケイブ教授が半ばミイラ化した状態で発見される。その遺体から謎の疫病が広がる。
大英博物館の考古学者サファイア・アル=マーズは、シグマの司令官ペインター・クロウに調査を依頼する。その直後、何者かの襲撃を受けて拉致された。
シグマの隊員ジョー・コワルスキとグレイ・ピアース隊長、ギルドの元工作員でグレイの恋人セイチャン、マッケイブ教授の娘で考古学者のジェーン、教授の教え子で生物考古学者のデレク・ランキンは、スーダンに赴き、病気の原因と治療法を探る。
一方ペインターとキャットは、サファイアが極北の地エルズミーア島のオーロラ・ステーションにいることを突き止めた。嵐が迫る中、彼女を救出すべく現地へ向かうが・・・

<感想>
本編に入る前に、セイチャンとコワルスキを主人公とする短編『クラッシュ・アンド・バーン』が併載されている。この意外な組み合わせは新鮮で面白かった。
本編の方も危機一髪の連続でスリリングな展開だ。探検家スタンリーとリヴィングストンの逸話、不思議な古細菌とその謎解きと相俟ってとても面白いと思う。
しかし、敵の正体は下巻に入って直ぐ明かされる。あとは地球粉砕阻止というクライマックスに向けて一直線と思いきや、セイチャンとギルドの暗殺者ヴァーリャの対決、長いエピローグが待っていた。
長期シリーズなので新刊が出ると読んでしまうが、治療法の発見は呆気ないし、父親に対するグレイの行動にも違和感を覚えた。
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ダニエル・シルヴァ『死線のサハラ』  ローラン・オベルトーヌ『ゲリラ』
  


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読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。