2019年05月20日

迷宮捜査

緒川怜 著

<あらすじ>
東京・汐留に本社がある通信社の朝鮮半島問題に詳しい外信部デスク・沢松優子と、その長男で大学卒業後引き籠り同然の生活をしていた直純が、世田谷区奥沢の自宅で惨殺された。
鷹栖警部が率いる捜査一課殺人犯捜査三係、別名「鷹軍団」の名波刑事は、単独犯の犯行と睨む。
翌日の未明、多摩川に架かる丸子橋で前後不覚となっていた、村瀬と名乗る男が交番に保護される。村瀬は、公安部のキャリア官僚・津田に連絡して欲しいと頼む。
やがて奥沢の現場状況は、昨年、目黒区の住宅で両親と子供ふたりを含む一家全員が惨殺された、未解決事件と酷似していることが判る。
しかし、共通する遺留品があり、同一犯の可能性が高いのにも拘らず、不当な圧力がかかり、合同捜査にはならなかった。そして公安警察が絡んでくる可能性も浮上する。
名波たち「鷹軍団」は裏の捜査会議を開き、スタート早々から前途多難な捜査に挑むが・・・

<感想>
名波兄妹の生い立ち、警視庁公安部の暗躍と北朝鮮の諜報活動、暴力団の抗争事件、子供の転落事故など、枝葉が色々な方向へ延びて行き、面白いけれど困惑する。どうやって収束するのだろうと思っていたら、呆気ない幕切れだった。
しかし、伏線はしっかり回収している。ドンデン返しもある。最後まで楽しめる警察ミステリだと思う。
満足度 3.gif



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『ストールン・チャイルド 秘密捜査』  『冤罪死刑』  『サンザシの丘』
  


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ラベル:星3 緒川怜
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2019年05月17日

その鏡は嘘をつく

夏目信人シリーズ A
薬丸岳 著

<あらすじ>
大学病院の外科医・須賀邦治が痴漢の容疑で逮捕された。取り調べを担当した検事長の娘婿・志藤検事は、嫌疑不十分として須賀を釈放する。
その8日後、須賀は南池袋に借りていた部屋で首吊り自殺をした。現場を見た志藤検事は他殺の疑いが濃厚と睨み、管轄である東池袋署に再捜査を依頼する。
その頃夏目刑事は、須賀の遺体が発見される直前に現場近くの路上で起きた暴行事件を調べていた。
そして通信指令センターに、須賀は自殺ではなく他殺で、犯人は医学部専門の予備校講師・峰岸彩子だという匿名の電話がかかってくる。峰岸彩子は、5年前まで須賀が働いていた大学病院の外科医だった。
やがて一連の事件に、峰岸が担当する特別選抜クラスの生徒・浅川幹夫の関与が浮上するが・・・

<感想>
登場人物を通して人間の弱さや愚かさ、感性の違いを浮き彫りにしており、中盤で犯人逮捕に至るが、複雑な真相に辿り着けない。ここから予想外の進展を見せ、より一層面白くなる。結末には感動すら覚えた。
そして、憎しみを糧に犯罪者と闘っていく検事VS洞察力と嗅覚が優れている刑事の楽しみもある。読後感がとても良いミステリだと思う。
満足度 4.gif



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(夏目信人シリーズ) 『刑事のまなざし』  『刑事の怒り』
 

真保裕一『おまえの罪を自白しろ』  松岡圭祐『高校事変』
 


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ラベル:薬丸岳 星4
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2019年05月16日

追憶の夜想曲

中山七里 著

<あらすじ>
自身の幸福のために生活能力が乏しい夫を殺害した、15歳と6歳の娘2人の母親・津田亜希子に懲役16年の判決が下った。亜希子の代理人宝来弁護士は、量刑を不当として即日控訴の手続きを行う。
その直後、冷徹な論理で相手側の主張を粉砕する弁護士・御子柴礼司が、宝来を脅迫してこの絶対不利な案件を買って出る。死者を鞭打って減刑を勝ち取るべく、独自調査に乗り出す。
一方、東京地検に転任したばかりの次席検事・岬恭平は、不倶戴天の敵・御子柴の真意を測りかねていた。自ら法廷に立つことにする。主張に瑕疵がなかったか再検討を始める。
そうしたなか御子柴は、控訴審第一回公判の冒頭陳述で無罪を主張するが・・・

<感想>
少年時代に残虐な幼女殺しをした男が、法外な弁護費用と規格外の法廷闘争で異端視される弁護士となっている。非現実的な話だけど、巧妙なプロット、心理戦の法廷劇、想定外の逆転劇などが相俟って、とても面白いミステリだと思う。
しかし、決め手となった証拠品の存在に違和感を覚えた。安直すぎると思う。
満足度 3.gif



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樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 逃亡山脈』東川篤哉『ハッピーアワーは終わらない』
   


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ラベル:星3 中山七里
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2019年05月15日

分水嶺 濁流の果て

若狭勝 著

<あらすじ>
平成23年9月、東日本大震災に伴う原発事故避難者の佐藤純一が、妊娠8ヶ月の妻佳子の腹部を包丁で刺して殺害した。
純一は自ら警察に通報した。長期に亘る刑務所暮らしや警察官僚である姉のことを考え、事故で済ませようとする。偽りの記憶を自分に刷り込む。勤め先の元上司が付けてくれた浅川弁護士にも偽りのストーリーを話し、妻の幼馴染みである本宮佳奈子との不倫も隠した。
この事件を担当することになった石川検事は、強い憤りを感じていた。殺人罪で起訴すべく、被疑者を追及するが・・・

<感想>
真面目に生きてきた普通の人が、想像を絶する悲惨な出来事を経験して破滅していく。
逮捕から公判までの流れ、現行司法制度の不備などを、まるで新聞記事のように淡々と描いており、嫌な現実味を帯びて読者に迫ってくると思う。
しかし、謎も予想外の展開もない。殺人事件を題材にしているが、ミステリの風味もない。被害者の無念や法の矛盾など、いろいろ考えさせられるが、それ以上でも以下でもない。面白味があまりない小説だったな。
満足度 3.gif



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真藤順丈『宝島』  今村翔吾『童の神』   垣根涼介『信長の原理』
  


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ラベル:若狭勝 星3
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2019年05月14日

蓮の数式

遠田潤子 著
装画 牧野千穂

<あらすじ>
商業高校卒業のおとなしいだけが取り柄の珠算講師・千穂は、義母お気に入りの料亭で義母同席のうえ、教育心理学の教授である夫・安西真一と13回目の結婚記念日を過ごした。夫が運転する車で帰宅途中、接触事故を起こす。
子を産めない千穂は、安西家では役立たずとしか見られていない。夫と義母に命じられるまま身代わりになる。
しかし、被害者の男は千穂を無視して夜の町に消えてしまった。
その後、男の名前が高山透で算数障害、ディスカリキュリアだと判る。千穂は透のアパートへ通い、そろばんの個人レッスンをする。
ところが夫に気づかれ、千穂は暴力を振るわれる。義母の暴言に逆上し、義母を殺してしまう。千穂は透のアパートに走り、彼に抱かれる。翌朝、「蓮を見に行くか?」と言う透と共に逃走するが・・・

<感想>
当たり前だと思っていたものが、実はそうではないと気付かされる。長年虐げられてきた人間の苦しみや世の中の理不尽が胸に迫ってくる。読み出したら止められない。
存在を否定された子供と無国籍の子供、いじめとDV夫などの社会問題を絡ませ、人殺しの逃避行と家族を描いた、とても悲しく切ない小説だと思う。
満足度 4.gif



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『鳴いて血を吐く』 まさきとしか『ゆりかごに聞く』 赤松利市『ボダ子』
  


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2019年05月13日

はじめてのやせ筋トレ

とがわ愛 著
順天堂大学医学部教授 坂井建雄 監修


<内容>
基本のやせ筋トレ・・・1.内転筋/美脚になれる筋トレ界の絶対的エース!ワイドスクワット/シメトレ!クロスレッグアダクション 
2.大殿筋・中殿筋/お尻はま〜るく!脚は長〜く!ヒップリフト/シメトレ!ライイングヒップアブダクション 
3.ハムストリングス/美脚×ぷり尻で、後ろ姿が生まれ変わる!ルーマニアンデッドリフト 
4.腹直筋・腹横筋/くびれを作るなら腹筋よりもだんぜんコレ!デッドバグ/思わず自撮りしたくなるお腹が作れる!レッグレイズ/お腹を割りたい人の必須種目!クランチ 
5.広背筋・大円筋/「天使の羽根」の出た、美しい背中に!ダンベルベントオーバーロウ/背中下部を狙い打ちして、浮き輪肉を撃退!ツイストバックエクステンション/シメトレ!タオルローイング 
6.大胸筋/美乳メイクするならこれしかない!ワイドプッシュアップ/シメトレ!ダンベルフライ 
7.上腕三頭筋/たるみのない、すっきり二の腕を目指すなら!ライイングフレンチプレス 
8.三角筋/肩にふくらみをつければ、小顔効果大!サイドレイズ/1日10分!1週間筋トレプログラム/筋トレ後にやりたい!反り腰改善のキャットバック

やせ筋トレ上級編・・・お腹を割って、くびれを作りたいなら!ツイストシットアップ/集中的にお尻を鍛える!ブルガリアンスクワット/下半身強化で、さらにまぁるい美尻に!バックランジ/引き締まった、かっこいい背中を手に入れよう ワンハンドローイング/もっともっと、バストアップ!ダンベルプレス/お食事アイデア集

細見え!ストレッチ・・・上腕二頭筋/前腕屈筋群/前もも/ふくらはぎ/お腹の肉/内転筋/背筋

<感想>
漫画で解説しており、分かり易く見やすい。単純な動作だけど、結構効き目がある。高価な器具を必要としないのもいい。筋トレ初心者やダイエットに最適な本だと思う。
満足度 3.gif



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『10キロやせて永久キープするダイエット』  『すごいやせる!股関節1分ストレッチ』
   


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2019年05月10日

崩壊の森

本城雅人 著

<あらすじ>
1987年(昭和62年)4月27日、ソビエト連邦。モスクワ特派員を命じられた東洋新聞の記者土井垣侑は、チェルノブイリ原発事故から丁度1年目のこの日を選び、ゴルバチョク政権が進めるペレストロイカにより、風通しが良くなったモスクワに降り立つ。
しかし新任早々、当局を刺激しないよう「特ダネ禁止」を言い渡される。モスクワ特派員はソ連政府の管理下でしか取材することができず、土井垣の仕事は東洋新聞モスクワ支局を守ることだった。
そんな状況に不満を抱いた土井垣は、夜のバー回りをして情報網を築き、独自ネタを掴もうとする。背中に監視の目を感じつつ取材活動を続け、世界的スクープを連発していく。
69年間続いた巨大な社会主義国家「ソビエト連邦」が消滅する歴史的瞬間に立ち会うが・・・

<感想>
ベルリンの壁解放と東西ドイツの統一、東欧の民主化、バルト三国の独立、ソ連崩壊・クーデター・消滅など、激変する世界の渦中にいた日本人特派員を描いている。
近代史を顧みることができ、紛争地域や日本と緊張関係にある国の特派員の役目と仕事など、興味深く勉強になった。
それにメディアの取材合戦、商社マンと大使館職員、ソ連共産党やKGB、二重スパイなどが絡み、とても面白い小説だと思う。
満足度 4.gif



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『ミッドナイト・ジャーナル』   『傍流の記者』
   


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2019年05月09日

第三帝国の愛人

(ヒトラーと対峙したアメリカ大使一家)
エリック・ラーソン 著
佐久間みかよ 訳 「IN THE GARDEN OF BEASTS」

<内容>
1933年ナチス台頭期、駐独アメリカ大使としてベルリンに赴任したドッド一家の体験を描いた歴史ノンフィクション。

<感想>
手紙や日記、回想録、歴史文書などを基に、大使としてベルリンに赴任したシカゴ大学歴史学部教授ウィリアム・ドッドとその娘マーサの経験と意識を通して、戦争へと続く当時の出来事を明らかにしている。
ドイツの変容、ユダヤ人迫害、孤立主義志向とアメリカ政府の対応、権力闘争、監視社会とスパイ、マーサの恋愛遍歴など、資料として良いものなのだろうが、登場人物が多くて頭に入りにくい。主軸となる父娘にも共感できない。なぜ民衆がナチ革命を支持したのかも良く分からない。読み物としても面白くない。
しかし、民衆を誑かして扇動するマスメディアの脅威、力がある者だけを重んじる高圧的な政府や、集団ヒステリーと無知でいることの恐ろしさが良く分かった。その観点から一読の価値はある本だと思う。
満足度 2.gif



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ディヴィッド・グラン『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』


ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』
   


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2019年05月08日

アイル・ビー・ゴーン

刑事ショーン・ダフィ・シリーズ B
エイドリアン・マッキンティ 著
武藤陽生 訳 「IN THE MORNING I’LL BE GONE」


<あらすじ>
1983年9月25日水曜日、メイズ刑務所から38名のIRA受刑者が脱獄した。
FBI高官の逆鱗に触れてしまい、国境沿いの制服警官に降格させられていたショーン・ダフィは、携帯無線で呼び出され、久しぶりに古巣のキャリックファーガス署に駆け付ける。
するとこの脱獄計画の首謀者のひとりは、元同級生ダーモット・マッカンだった。
12月下旬、ショーンは内部調査班にハメられて無給の停職処分となる。
翌年1月、解雇手続きの書類が届き、ショーンは警察を辞めた。
無為の時間を過ごしていたところ、MI5の工作員ケイトからダーモット・マッカンの居場所を突き止めて欲しいと頼まれる。
完全復職を条件に任務を引き受けたショーンは、その捜査中、ダーモット・マッカンの元姑メアリーから取引を持ちかけられる。4年前の未解決事件である末娘リジーの死の真相を突き止めれば、ダーモット・マッカンの居場所を教えると言うのだ。
しかし、表と裏ふたつの出入り口の閂が現場を完全な密室に仕立てていた。そして同時期に、リジーの勤務する法律事務所で空き巣事件が起きていた。
ショーンが密室の謎を追う中、複数の警察署への連続爆弾攻撃があり、元同僚マティ・マクブライド巡査刑事が命を落とす・・・

<感想>
シリーズ3作目でレギュラーだったブレナン警部が去り、鑑識官のマティ・マクブライドも逝ってしまった。ショーンが軽口を叩けるのは、マクラバン(クラビー)巡査刑事しかいない。
しかし、戦争に引き裂かれた街を舞台に、史実や歴史上の人物のエピソード、複雑な国民感情を絡ませ、テンポ良く話が進む。巻を重ねる毎に巧くなっている。
悲愴感の中に辛辣なウイットとユーモアもあり、密室の謎、テロリストの家族の絆、音楽などが相俟って凄く面白いミステリだと思う。
シリーズ5作目『Rain Dogs』(2016)は、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀ペイパーバック部門を受賞したそうだ。続編が楽しみでならない。
満足度 5.gif



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『メイズ 大脱走』   ブラッド・ピット『デビル』
   


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2019年05月07日

ロースハムの誕生

アウグスト・ローマイヤー物語
シュミット・村木眞寿美 著

<内容>
日本独自のロースハムは、1921年(大正10年)に誕生した。その発明者であるドイツ人アウグスト・ハインリッヒ・ローマイヤー(1892〜1962)の生涯を描いたノンフィクション。

「序 青島(チンタオ)」「1.だれがロースハムを「発明」したのか」「2.ローマイヤーの生い立ち」
「3.不穏の海」「4.第一次世界大戦」「5.青島陥落」
「6.東京で新しい出発」「7.それぞれの戦線」「8.ゲシュタポ 特高 憲兵隊の時代」
「9.日はまた昇る」「エピローグ」

<感想>
ロースハムの発明者アウグスト・ローマイヤーの生涯とドイツ近代史が相俟って、凄く面白い歴史書だと思う。
サンドイッチに欠かせないロースハムは、第一次世界大戦の捕虜だったローマイヤーが日本で手に入る材料を工夫して作った日本独自のもので、ドイツにはないハムだとは思いもしなかった。それにシェパード犬が青島の戦利品だったことや、トルコのアルメニア人迫害とオランダによるニアスの悲劇も知らなかった。複雑なヨーロッパの歴史、ナチズムが起きる背景など、戦争の知識も浅いので読み応えがあり、予想以上に面白い本だった。
満足度 4.gif



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『クーデンホーフ光子の手記』   『ミツコと七人の子供たち』
   


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読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。