2024年05月21日

消えた子供 トールオークスの秘密

2017年英国推理作家協会(CWA)新人賞受賞
クリス・ウィタカー 著
峯村利哉 訳 「TALL OAKS」
カバーイラスト 亀谷哲也

<あらすじ>
全米でも犯罪発生率が最低の部類に入る小さな町トールオークス。殆どの町民は裕福な階層に属しており、守るべき家名を背負っている。
ある嵐の晩、地階にある子供部屋にひとりで寝かせていた3歳の息子ハリーが、忽然と消えた。
子供部屋には、最新型の赤ちゃんモニターが設置されていた。シングルマザーのジェスによれば、ハリーがいなくなる直前、そのモニターから彼女の名前を呼ぶ声が聞こえ、ピエロのマスクを被った男が息子の部屋にいたと言う。
鑑識班が子供部屋を捜索すると、ピエロのものと思われる緑色の毛が発見された。町民総出で子供を探したが、見つからなかった。拉致犯からの電話も無かった。警察は手掛かりすら掴めなかった。
ハリーが攫われてから3か月が経過し、町民の間で事件への関心が薄れ始める。
そうした中ジェスは、被害者の母親として警察署に足繫く通い、事件が忘れ去られないよう奮闘していた。そして警察署長ジム・ヤングも、手掛かりを求めて捜査を続けていた。
やがて、住民たちそれぞれが抱えている秘密が明らかになって行く・・・

<感想>
本筋である事件をそっちのけにして、ギャング気取りの男子高校生とその家族、写真館の男性店員とその母親、表面上は似合いであるジェスの叔母夫婦など、トールオークスの町民をユーモアとウイットの利いた筆致で描き、楽しく読ませる。しかもそこには事件解決の伏線が散りばめられていた。
次第に明らかになる住民たちの秘密、ジェスとジムの関係、フォードの販売員ジャレッドを巡る騒動の顛末、恐ろしい真相などが相まって、凄く面白いミステリだと思う。それに毒のある母親の看護をしていた巨漢が、最後に報われてほっとした。
しかし、ジムの暴力行使は行き過ぎだと思う。看過できないな。
満足度 4.gif


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2024年05月17日

嵐にも負けず

〈ワニ町〉シリーズ F
ジャナ・デリオン 著
島村浩子 訳 「HURRICANE FORCE」
カバーイラスト 松島由林

<あらすじ>
アメリカ南部の湿地帯の町シンフル。アイダ・ベルとガーティの天敵シーリアが、新町長に就任したせいで、町はいまだ落ち着かない。
月曜日の朝、20年以上も行方を晦ましていたシーリアの夫で、自称画家の負け犬だったマックスがカフェに現われた。
フォーチュンたちがシーリアとマックスの対決を見物していると、マックスはパンジーが実の娘ではないと宣言した。
その直後シーリアは雑貨店へ行き、ショットガンの弾をひと箱買った。
そんな中、ハリケーンが襲来した。フォーチュンたちが教会に避難していると、突風が大量の高額紙幣を運んできた。その騒動の最中、CIAでコンビを組んでいたハリソンから電話があり、武器商人アーマドがシンフルに向かっている可能性が出てきた。
そしてハリケーンが通り過ぎた後、ショットガンで撃ち殺されたマックスの遺体が、シーリアの家で見つかった。フォーチュンは、またしても事件にどっぷり浸かる羽目になる・・・

<感想>
軽快なリズムでストーリーが展開し、爆笑もののエピソードも満載だ。
そしてフォーチュンが、いつになく凄腕のCIA秘密工作員らしく見える。丁度良い塩梅でロマンスもあり、楽しくて仕方がない。
憂さ晴らしに持って来いの、凄く面白いコージーミステリだと思う。
本作にてカーターは、アイダ・ベルとガーティの軍歴とフォーチュンの正体も知った。続編が楽しみでならない。
満足度 5.gif


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2024年05月15日

アガサ・レーズンとけむたい花嫁

英国ちいさな村の謎 S
M・C・ビートン 著
羽田詩津子 訳 「There Goes the Bride」
カバーイラスト 浦本典子

<あらすじ>
探偵助手だった若いトニ・ギルモアが、自分の探偵事務所を開いてアガサから独立した。元部下で現在は大学生のハリー・ビームが、資金援助をしたのだ。
更に元夫のジェームズ・レイシーが、若く美しいフェリシティと結婚することになった。ジェームズの婚約パーティーで出会ったフランス人、シルヴァン・デュポアに電話すると、彼はアガサによそよそしかった。
そこでアガサは、戦場跡のガイド本を書こうとしているジェームズを見返してやろうと考え、クリミア戦争の戦場跡を訪れた。
ところが、行く先々でジェームズとフェリシティを見かける。アガサは家に戻り、仕事に復帰すると、ジェームズに対する執着心が消えた。
一方ジェームズは、この結婚に不安を覚えていた。結婚から逃げたいとアガサに打ち明けると、「花嫁を撃ち殺したら?」と言われた。
そしてアガサは、フェリシティからストーカーの疑いをかけられた。
結婚式当日、フェリシティがウェディングドレス姿のまま自宅で何者かに撃ち殺された。警察は嫉妬に駆られたアガサと、結婚が嫌になったジェームズの共謀を疑うが、馬鹿げた帽子のおかげでアガサの容疑は晴れた。
そんなアガサは、フェリシティの母親から犯人捜しを依頼される・・・

<感想>
50代前半のアガサは年齢のことで不安になっていて、若く美しくて優秀なトニに嫉妬している。極度の負けず嫌いのため、自分の優秀さを証明しようとして何度も死体に出くわし、死にかける。
そして、ジェームズは兄のような存在になってしまい、チャールズは好きな時にアガサの人生にやって来ては去って行くし、ロイはたまに訪ねて来るだけだ。愛を求めるアガサは、自分だけの男性が欲しくて高級結婚紹介所に登録して騙される。
また、寂しがり屋でもあるので、予定のない週末や孤独に耐えられない。甘い言葉や罠にやすやすと嵌ってしまい、友人たちに助けてもらう。
ヘマばかりして意気消沈し、自信を失って誰にも必要とされていないと勝手に思い込んだ挙句、引退宣言してしまう。
公私共に最後まで目が離せない展開になっており、とても面白いコージーミステリだと思う。次作『アガサ・レーズンと告げ口男の死』が楽しみだな。
満足度 5.gif


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2024年05月10日

水脈

伊岡瞬 著

<あらすじ>
8月18日早朝、神田川の護岸に設けられた排水口から、若い男性の遺体が発見された。
被害者は、都内の私立大学3年生・森川悠斗。手足を縛った上で、激しい暴行を加え、背後から腕を使って扼殺し、その後どこか別の場所で遺棄したものの、台風の雨による増水のため、遺体は地下水路の「暗渠」を通って流れ着いたようだ。死体発見現場を所轄する和泉警察署に合同捜査本部が立った。
遺体発見日から5日目、宮下真人巡査部長と真壁修巡査部長の遊軍的捜査に、警察庁幹部の姪で大学院生の小牧グレース未歩が同行することになった。
捜査して行くと、警察関係者らしい男たちがうろついている空き家に辿り着いた。その家は高齢女性・今井朝乃が独りで暮らしていたが、去年の4月に亡くなっていた。家の裏手には暗渠の存在を匂わせる小径があり、鉄の蓋も見つけた。
そして、森川悠斗とバイト先が一緒だった大学の友人の聞き取りをすると、闇バイトが浮上する。
そんな中、神田川で顔に殴打痕のある女と男の死体が出た。そして森川と同じ時期に遺棄された可能性が出てきた・・・

<感想>
真壁と宮下の刑事コンビが初登場した『痣』の続編とのこと。
暗渠と特殊詐欺グループなどを描き、興味深く読ませる。
しかし、進展が遅いうえ展開も読めてしまう。推理する楽しみはあまりないな。
そして終盤で一気に種明かしとなるが、意外性もない。期待外れだったな。
満足度 2.gif


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2024年05月07日

灰いろの鴉

捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎シリーズ @
櫛木理宇 著

<あらすじ>
去年の夏に刑務所を出所したばかりの土橋典之が、介護付き有料老人ホームで大量殺傷事件を起こした。
捜査一課強行犯係・水町未緒巡査は祖父母の面会に訪れ、偶然その現場に居合わせたが、土橋はタクシーを奪い、検問をすり抜けて未だ逃走中だ。
鳥越恭一郎巡査部長は、4歳年下の所轄の捜査員・伊丹光嗣巡査とコンビを組み、捜査に当たる。
死者2人のうち、吉永欣造は19年前まで市内の小学校で校長をしていた。そして、32年前の小学生2人による老人連れ去り殺人事件における被害者の息子だった。
鳥越は、加害者の小学生・小笠原剛と甘糟周介を知っていた。鳥越の母は、加害者の担任教師だった。刑事だった父はこの事件の後、警察を辞め、両親は離婚した。
老人ホーム大量殺傷事件は、老人に対するヘイトクライムと思われたが、土橋と小笠原と甘糟は、同じ時期に同じ刑務所で服役していた。鳥越は関連があると睨み、伊丹と共に彼らの行方を追う・・・

<感想>
舞台は牧歌的な田舎町。主人公の鳥越恭一郎は今年で41歳になるが、結婚歴はない。目の覚めるような美形夫婦のひとり息子で、子供の頃から鴉と心で触れ合える美男子。陽気で人懐こく、フットワークの軽い男という道化の仮面を、長年かけて作ってきた。
発端は老人ホーム大量殺傷事件だが、捜査して行くうちに32年前の老人連れ去り殺人事件の真相が明らかになる。そして終盤に事態が急展開する。
32年前の忌むべき夏休みの出来事、寂しくて家庭環境が複雑で身の置き場が分からない子供たち、意外な真相などが相まって、凄く面白い警察ミステリだと思う。
満足度 4.gif


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2024年05月01日

遠火

警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ
今野敏 著

<あらすじ>
西多摩郡奥多摩町の山中で、ホテルのシーツに包まれた若い女性の他殺体が発見された。警視庁捜査一課の樋口班14名が現場に急行する。
未成年と思われる遺体の手首と足首に拘束された跡があり、死因は扼殺だった。そこで樋口顕警部は、少年事件課の氏家譲警部の助けを借りることにした。
やがて遺体の身元は、女子高生だけで運営されている企画集団に所属する17歳の少女・梅沢加奈と判明する。
その企画集団は、売春グループの隠れ蓑に使われている疑いがあり、渋谷署生活安全課が内偵していた。
加奈と仲の良かった少女・成島喜香は、息をのむほどの美少女だった。樋口は喜香の呼び出しに応じて公園で会う。その翌日、ネットニュースにその時の写真が載った。樋口は、喜香の行動に不審を抱く・・・

<感想>
主人公の樋口顕警部は争いごとが嫌いなので、言いたいことがあっても口を噤んでしまう。そしていつの間にか相手を手懐ける。仲間はそれを樋口マジックと呼ぶ。
警察の捜査を丁寧に描いており、合同捜査本部の人間模様、現代の若者の生態と性の商品化などが相まって、とても面白い警察小説だと思う。
しかし、犯罪の動機がさっぱり解らない。後味の悪い事件だったな。
満足度 3.gif




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2024年04月26日

赫き女王

北里紗月 著
装画 荻原美里

<あらすじ>
九州・パラオ海嶺の中央に位置する瑠璃島は、サンゴ礁に囲まれた楽園のように美しい無人島だ。島にあるのは海洋生物総合研究所だけで、海洋生物資源の有効利用を主目的にしている。所長に桐ケ谷杏上席研究員を置き、25名の生物学者が研究を行っている。オニヒトデに含まれるDNA分解酵素を研究している高井七海が、この研究所の準研究員となって9ケ月となる。
ある日、島の沖合で赤潮が発生し、桐ケ谷所長と研究員4名が屋上から転落死した。この状況を東京の本部と警察に通報したところ、3日後に船が到着するまでの間、研究員たちは業務を停止して待機することになった。
その直後、桐ケ谷所長が独りで秘密裏に新種の生物の研究を進めていたと判明する。彼女はこの生物をレッド・アルベオラーダ・クィーン、略称レッドと名付けていた。
七海は転落死した職員の行動異常がレッドの影響であると考え、鳥類の生態学者・三上桃子、沖野研副所長と共に調査に乗り出す。そして、異形の生物たちの攻撃的な採食行動に出くわす。レッド感染は島全体に広がっていた・・・

<感想>
評判が良いので読んでみた。非現実的な現象を描いており、確かに面白いと思う。
しかし中程まで読まないと、その本領は発揮しない。主に3人しか登場しない。展開も読めてしまう。どこが極限のバイオパニックホラーなのか、サバイバル活劇なのか、さっぱり分からなかったな。期待値が高過ぎたのかもしれない。
満足度 3.gif


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2024年04月23日

海渡る北斎

「波の伊八」と19世紀のインフルエンサー林忠正
神山典士 著
装画 蟹江杏

<内容>
「プロローグ この1000年で人類史に最も貢献した100人」
「第1章 波に命をかけた男〜波の伊八」
「第2章 波に魅せられた男・葛飾北斎」
「第3章 ゴッホもモネも熱狂した19世紀末ジャポニスム」
「第4章 北斎と日本美術をプロデュースした男・林忠正」
「エピローグ 150年を経た「北斎ブーム」」
「あとがき 前作から広がる北斎の世界」

<感想>
波の伊八と言われる彫物師・武志伊八郎信由58歳の作品とされている、行元寺(千葉県いすみ市)の欄間を飾る彫り物「波に宝珠」が、絵師・葛飾北斎によって浮世絵となり、海を渡って西洋人を驚かせ、世界の絵画史に大きな影響を与えた。
伊八の彫った波と北斎が描いた波を並べて見ると、その酷似性がひと目でわかる。
北斎が房総半島へやって来て伊八の作品を見たに違いないと語られる状況証拠、明治時代の美術商・林忠正の功績など、勉強になった。
とても興味深く面白い読み物だと思う。
満足度 4.gif


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2024年04月19日

可燃物

米澤穂信 著
装画 野中深雪

<内容>
群馬県警を舞台にした短編ミステリ集。
『崖の下』『ねむけ』『命の恩』『可燃物』『本物か』を収録したもの。

<感想>
余計なことは喋らない、上司から疎まれる、部下にも良い上司とは思われていない葛警部を主人公とした、面白い警察小説だと思う。
『崖の下』は、スノーボーダー遭難事件と刺殺事件。葛警部が凶器の不在に挑戦する。
『ねむけ』は、強盗致傷事件と信号交差点での出会い頭事故の捜査を並行して行う。
『命の恩』は、榛名山麓のばらばら遺体遺棄事件。意外な顛末だったな。
『可燃物』は、太田市のゴミ集積所を狙った連続放火事件。葛警部は、違和感を徹底的に調べていく。犯人像もその動機も意外性はあるが、皮肉な結末だったな。
『本物か』は、ファミリーレストランの立てこもり事件。どんでん返しがあり、葛警部の鮮やかな推理が光る作品だと思う。
短編だと物足りないことが多いが、本書は無駄なエピソードがない分、葛班の地道な捜査と葛警部の卓越した推理力を楽しめた。
満足度 4.gif


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2024年04月17日

変な家

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原作 雨穴
監督 石川淳一
出演 間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈
長田成哉 DJ 松永(Creepy Nuts) 瀧本美織 根岸季衣
嶋政伸 斉藤由貴 石坂浩二

<あらすじ>
白いお面を被ったユーチューバー・雨男は、所属事務所の担当から購入を検討している中古一軒家の相談をされる。
開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えるが、間取り図に 「謎の空間」が存在しており、妻が難色を示していると言う。
そこで知り合いの建築設計士・栗原に家の間取り図を見せて意見を求めると、そこかしこに 「奇妙な違和感」が存在すると言う。そして栗原は、この家のおかしなところを次々に指摘し始めた。
ネタ探しに困っていた雨男は、この変な家の謎を追うが・・・

<感想>
本作品は、謎の人物・雨穴(うけつ)によってアップされたYouTubeの人気ミステリ動画「変な家」と、その前身である同タイトルのウェブメディア記事を元に、物語の続きを書き加える形で書籍化したミステリ小説の実写映画化とのこと。
謎が謎を呼ぶミステリ仕立ての展開になっており、不気味なシーンが相まってスクリーンから目が離せない。とても面白いと思う。
しかし、舞台が田舎に移り、真相が見えてくる終盤になるとホラー色が強くなる。オチを知った途端、伏線の回収よりも、これまでのエピソードとの整合性が気になり、興醒めしてしまった。
満足度 3.gif


posted by ももた at 08:56| 東京 ☀| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。